大切な家族が亡くなったら、故人の所有していた財産は、法定相続人が受け継ぎます。
もし相続放棄するなら、何を放棄して、どんな財産なら受けとれるのか知らなくてはいけません。
このページを最後まで読めば、次のことがわかります。
- 相続放棄したらどうなる?
- 相続財産の対象外となるもの
- 相続財産を調べる方法
- 連帯保証人の立場は?
何が相続財産に含まれているのか、弔慰金や葬儀費用をどうするべきかについて説明します。
相続財産の種類と見つける方法
故人が生前に所有していた財産は、そのほとんどが相続財産になります。
預貯金や不動産などの資産、著作権や特許権、損害賠償請求権はあなたにプラスになる相続財産です。
借金やローン、未納税金などはマイナスの財産となり、これも受け継がなくてはいけません。
相続財産にはどのようなものがあるか
相続放棄することで、故人の負債を家族が支払わなくてよくなります。
負債には、借金のほかにも家賃や営業上の未払金、交通事故などによる被害者からの損害賠償なども。
でも相続放棄すると、当然ですが良いことばかりではありません。
プラスの財産も放棄しなくてはいけないので、事前に相続財産のすべてを知っておきましょう。
相続財産には大きく分けて、次の3種類になります。
- プラスの財産
現金、預貯金、有価証券(株式、国債、社債など)
土地、家屋、賃借権、抵当権、著作権
貴金属、家財家具、自動車
故人が受取人の保険金
- マイナスの財産
借金、ローン、未納税金、営業上の未払金
不法行為、債務不履行、損害賠償、保証債務
- 相続財産の対象外
香典、弔慰金、死亡退職金
葬儀費用、埋葬料、墓地、仏壇、位牌
故人以外が受取人の保険金
故人の衣類や身の回り品
このように、財産の中には一部例外があって、相続財産の対象外になるものもあります。
具体的には保険金や死亡退職金、弔慰金などで、これらは相続財産にはなりません。
マイナスの財産が多ければ相続放棄も視野に
もしトータルでマイナスの財産が多ければ、相続放棄も視野に入れます。
相続放棄ができる期限は3ヶ月以内なので、早急にどうするか決めなければいけません。
借金や損害補償などを、預貯金や不動産などの資産から支払えそうになければ相続放棄を選びます。
相続財産を調べる方法
相続財産は口座の残高、登記簿、証券などを探せば、ある程度把握することができます。
故人の部屋をくまなく探し、関係書類を見つけましょう。
- 通帳にすべて記帳されているとも限らないので、銀行で「残高証明書」を発行してもらいます。
- 不動産は登記簿で確認できますが、市区町村の役所で「固定資産課税台帳」を閲覧することでも確認できます。
- 有価証券(株式、国債、社債など)は、証券や証券会社の通知書を確認します。
プラスの財産がわかったら、マイナスの財産も探します。
借用書や契約書があればわかりやすいですが、通帳の内容や明細書からもみつけられます。
- 個人から借金している場合、少額であれば契約書や借用書がないことが多く、相手からの連絡があってはじめて知らされることもあります。
- 消費者金融からの借金の場合、期日を過ぎれば電話や督促状を送ってくるので、そこで借金の残高を確認します。
- 金融機関のローンは、銀行の通帳やクレジットカードの送金履歴に残っています。住宅ローンの場合、契約者の死亡で保険が適用されます。
あらゆる契約書や請求書をさがしましょう。
家の中のモノ以外で調査しきれないなら、税理士や弁護士など相続のプロに依頼することも考えます。
相続放棄しても受けとれる相続対象外の財産
相続放棄しても受けとれる相続対象外の財産について、すこし掘り下げてお伝えします。
ここで紹介する財産は、相続放棄したとしても手放す必要はありません。
香典、弔慰金、死亡退職金
香典や弔慰金、死亡退職金は相続財産にはなりません。
そもそも香典は、葬儀費用の負担を少しでも軽くするために、参列者が遺族に対しておくるものです。
そのため香典は故人の遺産にはならず、相続放棄したとしても喪主が受けとれます。
また、会社から弔慰金も遺族に支給されるため同様の考えです。
故人が本来会社から受けとるべき退職金は、死亡退職金として遺族に支給されるので、これも相続放棄しても受けとれます。
葬儀費用
相続人が相続財産を使ったり処分したら、相続すると認めたことになって相続放棄できなくなります。
これを単純承認といいますが、葬儀費用を故人の貯蓄から支払ったら、故人の財産を使ったことになりそうですね。
普通に考えたら相続放棄できなくなりそうですが、この場合は大丈夫です。
大阪高等裁判所で、つぎの判決があります。
葬儀は、人生最後の儀式として執り行われるものであり、社会的儀式として必要性が高いものである。そして、その時期を予想することは困難であり、葬儀を執り行うためには、必ず相当額の支出を伴うものである。これらの点からすれば、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。また、相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば、むしろ非常識な結果といわざるを得ないものである。
したがって、相続財産から葬儀費用を支出する行為は、法定単純承認たる「相続財産の処分」(民法921条1号)には当たらないというべきである。
※民法921条1号とは、相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき、相続することを認めた(単純承認)とされる条文です。大阪高等裁判所平成14年7月3日決定
つまり、お葬式をすることは当然のこと。
故人の財産から葬儀費用を支出しても、問題なく相続放棄できるとの判断です。
それでも必要以上に豪華なお葬式にしたりなど、裁判所に常識の範囲外と判断されたら相続放棄が認められなくなる可能性もあるので注意してください。
祭祀財産
祭祀財産とは、「位牌」「仏壇」「墓碑」「墓地」「家系図」などのことです。
祭祀財産は相続財産から切り離され、相続放棄したとしても関係ありません。
先祖のお墓や仏壇などを手放す必要はありません。
故人以外が受取人の生命保険の保険金
故人以外が受取人の生命保険の保険金も相続財産にふくまれません。
なぜなら、保険金を受けとる人が故人ではないからです。
それが他人であろうが相続放棄した人であろうが、受けとる権利は保険の契約書で受取人に指定された人にあります。
でも、受取人が故人になっていたり、受取人の指定がない保険金には注意。
この保険金は相続財産になってしまうので、もし受けとったら相続放棄できなくなります。
例えば、がん保険や医療保険などです。
これらの保険も死亡給付金が支払われることがありますが、故人を受取人に設定しているケースが多くなります。
相続すると連帯保証人の立場も引き継ぐ
相続すれば財産だけでなく、故人の権利義務も引き継ぐことになります。
故人が誰かの連帯保証人になっていたら、相続人がその立場になってしまいます。
相続する連帯保証人の立場とは
連帯保証人とは、借金の契約者本人と連帯して保証する人のことです。
単に保証人ともいいますが、保証人の場合には権利(債務の抗弁権、検索の抗弁権)があります。
契約者が支払いを滞納した際、いきなり保証人に請求することはできず、まずは契約者に督促します。
でも連帯保証人にはこの権利がないので、支払いが滞納すれば、立て替えるよう債権者から即請求されます。
故人が連帯保証人となっているかどうかは、契約書を確認します。
契約書(金銭消費貸借契約書)は連帯保証人の分も作成されているので、どこかにはあるはず。
契約書が見つからなければ、債権者からの督促があってからでしか分かりません。
故人が連帯保証人かどうかは、相続において重要なポイントです。
親子で債務者と連帯保証人のケース
親子で借金の債務者と連帯保証人になっていたら、相続放棄しても借金返済を免れることはありません。
上の図のように相続人が2人の場合、借金は「2分の1」ずつ相続します。
父親の借金の連帯保証人に長男がなっていたとしたら、つぎのようになります。
- 長男が相続放棄したら
長女が借金をすべてを支払い、長男は連帯保証人のまま - 長女が相続放棄したら
長男が借金をすべてを支払う - 長男・長女とも相続放棄したら
保証債務は消えないので、長男が借金のすべてを支払う
借金を支払っていくことができない場合、債務整理や自己破産などの手段をとらなくてはいけません。
相続放棄は3ヶ月と期限が短いので、とにかくスピードが大切です。
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