【5分でわかる】秘密証書遺言の検認!メリット・デメリットと手数料

 

遺言書には3つの作成方法がありますが、このなかで唯一、秘密証書遺言はおすすめできません。

なぜなら秘密証書遺言は、遺言書の内容を秘密にできるメリットがありますが、デメリットのほうが多いから…

それなら、どんな遺言書を作るのがおすすめかと言えば、やはり自筆証書遺言です。

自筆証書遺言の書き方と見本、法務局に遺言書を保管するメリット

このページを最後まで読めば、次のことがわかります。

  • 秘密証書遺言のメリット・デメリット
  • 秘密証書遺言の作成要件
  • 完成した遺言書の保管場所
  • 秘密証書遺言の検認

秘密証書遺言のメリット・デメリットや検認について説明するので、どの方式で遺言書を作成するか決めてください。

秘密証書遺言のメリット・デメリット

まずは、秘密証書遺言のメリット・デメリットについて説明します。

秘密証書遺言ってどんな遺言書

秘密証書遺とは書いて字のごとく、遺言の内容を秘密にできる証書です。
 ※証書・・・事実を証明する文書

民法970条で、秘密証書遺言の要件が決められており、この要件については後ほど説明します。

秘密証書遺言以外には、公正証書遺言、自筆証書遺言の方式があります。

  • 公正証書遺言
    公証人が責任をもって間違いのない遺言書を作成し、公正役場で保管してくれる方式。
  • 自筆証書遺言
    自分で遺言書を作成するため、費用が掛からず手軽に書ける方式。

効力のある遺言書の条件

メリット①遺言の内容の秘匿性

秘密証書遺言の方式を採用して遺言書を作成する最大のメリットは、何と言っても、遺言の内容を誰にも知られないことにあります。

この言い方では少し語弊ごへいがありますが、おおむね間違っていません。

遺言書を見つからない場所に隠していたはずが、何かの拍子に見つかり開封された。

こんな状況になれば、いくら秘密証書遺言で作成しても、遺言書の内容を読まれることがあります。

では、なぜ秘密証書遺言が遺言の内容をだれにも知られることの無い秘匿性の高い遺言書とされるのか。

その理由は遺言書の作成方法にあります。

秘密証書遺言は、あなたが一人で作成し、遺言書を書いたら封筒に入れて完全に封をします。

そして公証役場で、公証人と証人2人に「これはあなたの遺言書だ」という事実を証明してもらいます。

この過程において、ほかの人に遺言書を読まれることは一切ありません。

つまり遺言書の作成段階において、その内容を完全に秘密にできます。

メリット②作成要件が厳重

秘密証書遺言は、偽造や変造のおそれがありません。

これも大きなメリットの一つで、偽造や変造のおそれがなくなる理由は遺言書の作成要件にあります。

秘密証書遺言は、つぎの要件を守って作成することが、民法970条で決められています。

  • 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
  • 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。

遺言書に署名と押印し、それを封筒に入れて完全に封をします。

さらに、その綴じ目に「遺言書に押したハンコ」で封印します。

このハンコを市販のものでなく、少しもったいないですが遺言書専用で購入し、1回のみで使い捨てることでさらに偽造や変造を防げます。

デメリット①作成要件を守らないと無効

秘密証書遺言は、誰にも遺言書の内容を見られることなく作成できることがメリットです。

ですが、遺言書が有効な内容になっているかを、第3者に確認してもらうことができません。

いざ遺産相続のときに、遺言書の内容が無効だったなんてこともあります。

当然ですが、あなたさえ良ければ、遺言書を作成したときに誰かに内容を確認してもらうことはできます。

しかし、それは秘密にできるというメリットを、自分で捨てることになります。

デメリット②遺言書の保管場所が難しい

完成した遺言書の保管場所は、仏壇や自宅の金庫など、あなたが自由にえらべます。

保管しておくのに都合の良い場所があれば、遺言書の存在を亡くなるまで完全に秘密にできます。

ですが、誰にも秘密にしたいからといって、分かりにくい場所に保管したら、いざという時に家族に見つけてもらえません。

本の隙間に挟んでおけば、間違えてその本を捨てたときに、遺言書も紛失してしまいます。

秘密証書遺言を作成すれば、公証役場に作成記録が残りますが、保管場所についてはわかりません。

遺言書の保管場所を家族に知らせるには、エンディングノートがおすすめです。

ちなみに、公正証書遺言は公証役場、自筆証書遺言は2020年7月から法務局で保管してくれます。

デメリット③開封前に家庭裁判所で検認

秘密証書遺言は、開封前に家庭裁判所で検認しなくてはいけません。

検認というのは、家庭裁判所で遺言書を確認する作業のことで、相続人の立会いのもと開封されます。

>>遺言書を検認しないとどうなる?手続きから検認日までの流れ

検認の作業は、遺言者の死亡の証明書を提出しないと受付けできないので、もちろん生前にはおこなえません。

検認することで、遺言書の偽造や変造のおそれがなくなりますが、デメリットも存在します。

申請から1ヵ月くらい掛かり、検認手続きが終わらないと、故人の口座の解約や資産の処分もできません。

そのため遺族は、当面の生活費に困ることもあります。

秘密証書遺言を作成するための手数料

秘密証書遺言は自分で作成しますが、できあがった遺言書があなたのものであることを証明しなくてはいけません。

そのために、公証人に支払う手数料が必要です。

公証人と証人による確認

民法970条では、つぎのように決まっています。

  1. 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
  2. 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

公証役場で公証人と証人2人に「これはあなたの遺言書だ」という事実を証明してもらいます。

これで遺言書を厳重に、偽造や変造から完全に防ぐことができます。

公正役場で公証人に支払う金額

秘密証書遺言は、公証役場で公証人に証明してもらいますが、一律11,000円の手数料が掛かります。

この金額は、公証人手数料令28条で決められています。

秘密証書による遺言の方式に関する記載についての手数料の額は、一万千円とする。

証人2名は、もし公証役場に証人の手配もお願いするなら別途手数料が掛かります。

あなたが友人や知人にお願いして、証人になってもらうこともできます。

秘密証書遺言を有効な遺言書として作成する方法

秘密証書遺言を有効な遺言書として作成する方法を説明します。

秘密証書遺言の作成要件を守ること

作成要件は、民法970条で決まっています。

  • 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
  • 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
  • 遺言者が、公証人、証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
  • 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
  • 第968条第3項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

第968条第3項の規定とは、自筆証書遺言について書かれています。

遺言書の内容の修正は「遺言者がその場所を指示」「変更した旨を付記」「署名」「変更の場所に押印」しなければ効力が発生しないといった規定です。

秘密証書遺言はワープロで作成できる

秘密証書遺言は「証書に署名し押印」すれば、そのほかの部分は自筆でなくワープロ(パソコン)などでも作成可能です。

しかし私は自筆での作成をおすすめします。

なぜなら遺言書が秘密証書遺言の作成要件を守れず無効となっても、「自筆証書遺言としての要件を兼ねていたなら遺言書として有効になる」という救済措置があるからです。

民法971条

方式に欠ける秘密証書遺言の効力

秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第968条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。

自筆証書遺言としての要件は、次のようなものです。

  • 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
  • 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
  • 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

遺言書の「本文」「日付」も自筆することです。

秘密証書遺言の書き方と見本

秘密証書遺言の書き方と見本を紹介します。

秘密証書遺言を作成するポイントは、民法で決められた要件を守ることは当然ですが、誰に何を相続させたいか明確に記入することです。

つぎの遺言書サンプルは、秘密証書遺言の救済措置として有効な、自筆証書遺言の要件で作成しています。

遺言書の本文となる文章は、自書する必要があります。

別紙の目録や通帳のコピーなどの、署名以外は直筆とする必要はありません。

(画像をクリックすると拡大できます。)

内容の修正があれば、面倒ですが違う用紙で初めから書き直すことをおすすめします。

修正方法にも決まりがあり、間違えると修正した箇所が有効となりません。

念のため、遺言書のサンプルには修正の方法も記入しています。

遺言書を封筒に入れて完全に封をする

問題なければ、封筒に入れて封じ目に押印します。

かならず遺言書に押したハンコを使用してください。

memo

封筒の表書き

  • この封筒は何か、誰が作成したものか。これらが分かるように、封筒にも遺言書というタイトルと、あなたのものであることを記載しておきます。
  • 遺族が検認前に開封することのないよう、検認手続きの注意書きをしておきましょう。封筒に記載するかメモ書きを添えておきます。

公証役場で遺言書の登録

秘密証書遺言は、公証役場に出向き、公証人と証人2人に遺言書であることを証明してもらいます。

封書に公証人が、あなたの氏名、住所と日付を記入し、証人とあなたが署名・押印して完成です。

どうしても誰にも遺言書の内容を知られたくないという人以外は、秘密証書遺言の方式はおすすめしません。

費用を掛けず手軽に遺言書を残すなら、自筆証書遺言をおすすめします。

>>自筆証書遺言の書き方と見本、法務局に遺言書を保管するメリット

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