遺留分減殺請求

故人が遺言書を残していたなら、遺産は民法で決まった法定相続分とは違った分配になります。

例えば、「遺産の全額を〇〇に贈る」といった内容の遺言書なら、何もしなければその通りに遺贈されます。

でも、故人の配偶者と第1・第2順位の相続人には、生活の安定のために相手に最低限の遺産を請求する権利があります。

>>法定相続分と相続人の順位とは?

このページを最後まで読めば、次のことがわかります。

  • 改正された遺留分減殺請求って?
  • 遺留分減殺請求の手続きとテンプレート
  • 侵害された遺留分の計算方法

遺留分減殺請求いりゅうぶんげんさいせいきゅうのテンプレートと、権利を行使するための方法をお伝えします。

 

改正された遺留分減殺請求ってどんな制度?

遺留分とは、民法で決められた相続人に必要とされる最低限度の財産のことです。

もし遺言書が無ければ、法定相続分の割合をもとに、相続人同士の話し合いによって遺産は分配されます。

でも、その財産は元は故人のものなので、どう分けるかは故人の意思が尊重されなければいけません。

例えば、「長男◇◇に財産のすべてを相続させる」ことや「ユニセフなどに現金を全額寄付する」こともできます。

そのような極端な遺言書の内容なら、故人の財産で生活していた遺族は、生活ができなくなることにも…

こんなときに、遺産を受けとる権利を主張し、相手に遺産の分配を請求できるのが遺留分です。

民法改正で改善された点

民法改正で令和元年7月1日から、つぎのように遺留分の規定が変わりました。

民法改正のポイント

  • 遺留分侵害額に相当する金銭を請求できる
  • 請求された人が金銭を準備できなければ、裁判所に支払期限の猶予を求められる

遺言書で長男に不動産を贈ったケースを例に、民法が改正される前の不具合について説明します。

経営者だった故人が、長男に評価額1億5,650万円の会社の不動産を相続させ、長女には預金1,000万円を相続させました。

遺言内容に不満な長女が長男に対して、遺留分を請求しました。

長女の遺留分侵害額は3,163万円です。
(1億5,650万円+1,000万円)× 1/2 × 1/2 − 1,000万円)

これまでの制度なら、遺留分は侵害している遺産の持ち分を請求しなくてはいけませんでした。

このケースだと、長女は会社の不動産の20%を遺留分として長男に請求することになり、複雑な不動産の共有状態になってしまいます。

この点が改正され、長女は遺留分侵害額3,163万円を金銭で請求できるようになりました。

遺留分減殺請求するとは?

相続人のあなたが行動を起こさなければ、遺留分減殺いりゅうぶんげんさい請求権は消滅し、遺言書の通りに相続されます。

具体的な行動は、あなたの遺留分を侵害している遺贈された相手に遺留分減殺請求することです。

遺贈とは、遺言によって特定の人や法人などに遺産を無償で贈ることです。

遺留分侵害額の請求については、民法1046条で、次のように決まっています。

遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

遺贈を受けた受遺者から、遺留分侵害額を返してもらうよう請求しなくてはいけません。

遺留分の放棄

遺留分は相続人の権利ですが、故人の意思を尊重したいなら、その権利を放棄することもできます。

遺留分減殺請求権は相手に請求することで効力が出るため、遺留分を放棄するなら特にすることはありません。

生前にも遺留分の放棄はできますが、その場合には家庭裁判所で手続きしなくてはいけません。

遺留分を放棄しても、遺言書で指定されていない遺産については、法定相続分をしっかり受けとれます。

相続放棄したら遺留分を請求できない

相続放棄したら民法上、そもそも法定相続人でなかった扱いになるので、遺留分は発生しません。

そのため、代襲相続することもありません。

>>法定相続人と代襲相続とは?

もし相続放棄を検討しているなら、その点についても考えておくことが大切です。

遺留分減殺請求の手続きとテンプレート

遺留分減殺請求の手続きを進めるには、請求することの意思表示をしておきます。

遺留分減殺請求には、時効が決められているからです。

遺留分減殺請求権の時効

遺留分減殺請求権の時効は、遺留分侵害があったことを知った日から1年以内です。

また、侵害されていることを知らなくても相続開始から10年経過しても、時効が成立してしまいます。

このことは、民法1048条で、つぎのように規定されています。

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

期限内に一度でも意思表示すれば、時効が過ぎても遺留分の権利を失うことはありません。

それは、相手に対して一方的に意思表示することで大丈夫です。

言った言わないのトラブルを防ぐため、内容証明郵便で意思表示した記録を残すべきです。

遺留分減殺請求の意思表示は内容証明郵便

意思表示したことを確実に証明するために、内容証明郵便を送りましょう。

内容証明郵便とは、
郵便局が ①いつ ②どんな文章を ③誰から ④誰に 送付したかを証明できます。

そのためには、内容証明郵便の様式を守って作成しなければいけません。

遺留分減殺請求書を作成する手順は、送付する文書の作成と、それを書き写した謄本を2通用意します。

謄本2通は、差出人と郵便局がそれぞれ保存するためのもので、コピーで作成しても問題ありません。

用紙1枚に書ける字数や行数には制限があります。

字数 行数
縦書き 1行20字以内 1枚26行以内
横書き 1行20字以内 1枚26行以内
1行13字以内 1枚40行以内
1行26字以内 1枚20行以内

>>郵便局ホームページ

遺留分減殺請求のテンプレート

遺留分減殺請求の記載には、これといった決まりはありませんが、請求権を行使する意思が伝わらなければ意味がありません。

伝えておくべきポイントを押さえつつ、要点を整理して記入しましょう。

記入事項のポイント

  • 遺留分侵害者の氏名と住所
  • 故人の氏名、死亡日
  • 遺留分を請求する人の氏名
  • 故人との続柄
  • 遺留分を侵害した内容
  • 遺留分減殺請求権を行使する旨
  • 内容証明作成日
  • 内容証明作成者の住所、氏名

この内容を記入したうえで、相手方へ通知すれば、とりあえず時効切れの心配はなくなります。

遺留分減殺請求のテンプレートは、PDFで作成しているので、必要であればダウンロードしてください。

文書を作成したら、差出人と受取人の住所氏名を書いた封筒を用意し、郵便局で手続きをしましょう。

続いては、あなたの遺留分を計算してみます。

遺留分減殺請求の計算方法

遺留分減殺請求できる遺留分と遺留分侵害額は、つぎの計算式で算定します。

  • 遺留分 = 財産の総額 × 1/2 × 法定相続分
  • 遺留分侵害額 = 遺留分 - 受けとった金額

故人の財産の総額は、プラスとマイナスの財産の総額と、生前贈与の額を足した金額になります。

生前贈与は、相続人に対しては原則10年以内、第三者に対しては原則1年以内に贈与された財産が対象です。

遺留分侵害額として請求できる金額は、遺留分からあなたが受けとった財産を引いた金額です。

もしマイナスの財産も受けとったなら、その金額は上乗せできます。

兄弟姉妹は遺留分減殺請求できない

遺留分は、故人の配偶者や直系卑属、直系尊属のみに発生し、残念ながら故人の兄弟姉妹には発生しません。

遺留分は法定相続分の2分の1になります。

ただし、相続人が直系尊属のみなら、法定相続分の3分の1になります。

遺留分の割合

法定相続人の構成によって、それぞれの遺留分の配分が違います。

それぞれのパターン別に、遺留分の割合がどうなるか見てみましょう。

相続人が配偶者のみ

相続人が配偶者のみのパターンです。

配偶者には遺産総額の2分の1が遺留分の割合として認められています。

相続人が配偶者と直系卑属

相続人が配偶者とその子供のパターンです。

配偶者には遺産総額の4分の1、子供は合わせて遺産の4分の1を遺留分として認められています。

相続人が配偶者と直系尊属

相続人が配偶者と故人の親のパターンです。

配偶者は遺産総額の3分の1、直系尊属は合わせて遺産の6分の1を遺留分として認められています。

相続人が配偶者と兄弟姉妹

相続人が配偶者と故人の兄弟姉妹のパターンです。

配偶者には遺産総額の2分の1を遺留分として認められていますが、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。

相続人が直系卑属のみ

相続人が子供のみのパターンです。

子供には合わせて遺産総額の2分の1を遺留分として認められています。

相続人が直系尊属のみ

相続人が故人の親のみのパターンです。

直系尊属は合わせて遺産総額の3分の1を遺留分として認められています。

相続人が兄弟姉妹のみ

相続人が故人の兄弟姉妹のみのパターンです。

残念ながら、兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

遺留分減殺請求に応じない時の対処法

遺留分を請求したあと、相手方との話しあいで遺留分の問題を解決できればベストです。

しかし、相手が遺留分減殺請求に応じないなど、当事者間で解決が困難であれば家庭裁判所で調停をおこないます。

第三者が入ってくれるので、調停では相手と直接顔を合わせる必要はありません。

それでも解決しなければ、140万円以下であれば簡易裁判所、140万円を超える金額であれば地方裁判所への訴訟に発展します。

その場合は、弁護士などへ相談や依頼することも考えましょう。

でも、はじめから弁護士を通して相手に請求するのも考えものです。

相手は確実に警戒して、話し合いがややこしくなるかもしれないので、まずは当事者間で話しあいます。

それで解決しそうになければ、弁護士に相談することを考えましょう。

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