
電車の人身事故の発生件数は、毎年1,000件を超えています。
その中で約半数の方が、傷ましい事故で亡くなられている事実があります。
このページを最後まで読めば、次のことがわかります。
- 電車の人身事故の損害賠償はいくら?
- 電車の人身事故の発生件数と理由
- 鉄道会社へ賠償金を払えないなら相続放棄するべきか
- 相続放棄しても生命保険は受けとれる?
もし鉄道会社から賠償金を請求されたら、遺族は相続放棄するべきかについて解説します。
電車の人身事故の損害賠償金はいくら?
電車の人身事故の損害賠償はいくらになると思いますか。
「1億円を超える賠償金を支払わなければいけない」という情報も聞いたことがあるのではないでしょうか。
でも現実には、電車での人身事故で支払わなければいけない金額は、1,000万円未満であることが多いようです。
賠償金は高くても100万円
JCSTニュースの2008年8月の記事に、遺族に人身事故の賠償金1億円を請求することはあるのかといった特集があります。
その中で、鉄道会社への問い合わせた結果、JR東日本と東武鉄道は公表していないとの回答。
しかし京急電鉄がこれに回答し、次のように答えています。
「詳しい内訳は公表していないのですが、損害額自体で1件あたり200万円ぐらいです。車両も、そんなに大きく壊れる訳ではありません。基本的に損害賠償は求めていく、という方針なのですが、実際の請求額は高くても100万円いきません」
京浜急行電鉄、広報宣伝担当
遺族に720万円の賠償命令
livedoorニュースの2013年8月の記事では、電車にはねられた男性の遺族に720万円の賠償命令が出たとあります。
線路内に立ち入った認知症の男性の監督責任のある遺族へ、JRが損害賠償請求したものです。
この人身事故では、名古屋地裁が遺族に対し720万円の賠償金の支払いを命じました。
ですが、最終的には最高裁まで争って、2016年3月1日の判決では鉄道会社側が敗訴しています。
賠償金額1億円を超えることも
オリコン自動車保険ニュースの2014年10月の記事では、ダンプカーが踏切で列車と衝突した事故によって、1億1347万6892円の賠償金の支払いを命じられたとあります。
事故の内容は、1992年9月14日に最大積載量4倍の過積載運行したダンプカーが、下り坂でブレーキが効かなったことに原因があります。
そのまま停止できず踏切に突っ込み、やってきた列車の運転士が亡くなり、乗客67名が重軽傷を負ったという事故です。
この人身事故では、損害賠償は遺族ではなく、運転手や荷主、過積載させた会社への請求でした。
しかし電車での人事故で、実際に億越えの賠償金の支払いとなった事故の一例です。
電車の人身事故の発生件数と発生理由
電車の人身事故は年間どのくらい発生しているのでしょうか。
また、その発生理由とは一体どういったものなのでしょう。
電車の人身事故の発生件数
電車の人身事故の発生件数について、集計したデータベースでは、全国で毎年1,000件を超える人身事故が発生しています。
発生件数 | 死亡事故 | |
---|---|---|
2014年 | 1224 | 572 |
2015年 | 1145 | 533 |
2016年 | 1154 | 563 |
2017年 | 1122 | 696 |
2018年 | 1108 | 588 |
平均 | 1151 | 590 |
人身事故が発生すれば、その半数の500件以上が死亡事故につながっています。
電車での人身事故は、とても高い死亡率になります。
これらの人身事故発生件数や死亡者の数値が、他人事ではないこと事実をすこし紹介します。
悲惨な踏切事故が多い理由
国土交通省の統計データによると、踏切事故の発生件数は年間300件前後、そのうち死亡事故は約100件です。
死亡者の7割は歩行者、さらに歩行者のうち、65歳以上の高齢者は4割にもなります。
- 歩行速度が遅い
- 警報機が見えづらい
- 踏切内の段差、レールと路面の隙間などでひっかかり転倒
こういった理由から、踏切では老人の死亡事故がもっとも多くなっています。
駅のホームでの電車の人身事故
国土交通省の公表資料によると、駅のホームからの転落件数は、毎年3,000件ほど発生しています。
次のデータは、ホームに転落したけれど、幸いにも電車に接触しなかった件数です。
発生件数 | 酔っ払い | |
---|---|---|
2013年 | 3263 | 1959 |
2014年 | 3673 | 2070 |
2015年 | 3518 | 1979 |
2016年 | 2890 | 1781 |
2017年 | 2863 | 1896 |
平均 | 3241 | 1937 |
転落原因としては、酔っ払いが誤って落ちてしまうケースが50~60%と多いようです。
次のデータでは電車と接触(ホーム上やホームに転落)し、死傷した事故の発生件数です。
自殺した人は含まれません。
発生件数 | 酔っ払い | |
---|---|---|
2013年 | 221 | 133 |
2014年 | 227 | 142 |
2015年 | 198 | 122 |
2016年 | 187 | 106 |
2017年 | 176 | 96 |
平均 | 202 | 120 |
このように酔っぱらって電車に接触し、死傷事故に発展する危険があります。
ほかにも体調不良、携帯電話の使用、乗客同士のトラブル、視覚障害者など…
ホームからの転落死亡事故は他人事ではありません。
鉄道会社への賠償金を払えないなら相続放棄するべきか
電車の人身事故について説明しましたが、もしかしたら、家族が悲惨な事故に合うかもしれません。
そしてひとたび人身事故となれば、電車の遅延での払い戻し、バスなどへの振り替え、線路や車両の修理代や清掃代など、鉄道会社に損害が発生します。
鉄道会社への賠償金は誰が支払うのか
責任問題はその事故の原因が、いったい誰に(どこに)あるのかがポイントになります。
事故の状況によりますが、飛び込み自殺などはとくに人身事故を起こした本人に責任があります。
責任が本人にあるなら、鉄道会社が受けた損害は本人が賠償金を支払わなくてはいけません。
しかし、すでに亡くなっていれば相続人が負担することに。
実際に損害賠償を請求するかどうかは、鉄道会社の考え次第なので、全てのケースで賠償金を求められるわけではありません。
それでも、もし相続人に賠償金を請求されたらどうすればいいのか。
相続財産と賠償金をすべて把握してから、相続放棄するかどうか決めなくてはいけません。
相続財産よりも賠償金が巨額であれば、遺産を相続することで借金を払えなくなるかもしれません。
相続財産で賠償金が払えるなら、結果的に財産を相続したほうが良いこともあります。
相続放棄しても生命保険は受けとれる
そもそも相続放棄とは、故人のプラスの財産、マイナスの財産を受け継く権利を放棄すること。
プラスの財産は預貯金や不動産など、マイナスの財産は借金や損害賠償債務などです。
もし相続放棄しても、故人の生命保険の受取人になっているなら問題なく保険金を受けとれます。
つまり、賠償金を支払えず相続放棄したとしても、保険金は別枠で受け取れるということです。
故人が生命保険に加入していたかどうかも、相続放棄するかの大切なポイントです。
相続放棄するなら手続きは3ヶ月以内
相続放棄すると決めたら、3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければいけません。
この3ヶ月の期間(熟慮期間)は、民法で決まっているので、よく考えて放棄するなら早急に手続きをしましょう。
相続放棄が認められれば、故人の相続財産は一切受けとれなくなります。
ですが、負債も引き継がなくてよくなります。
家族が人身事故によって亡くなったら、状況や鉄道会社の考えによっては損害賠償を請求されます。
賠償金がとても支払いできる金額でなければ、迷わず相続放棄を選択しましょう。
それでも不安が残るなら、相続問題相談サポートを利用してみましょう。